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ネットスターズの国際業務を担当するシンガポールオフィス、NETSTARS Asia Holdings Pte. Ltd.のジャクリーン・トラウゼット・ワンに聞いた、シンガポールのキャッシュレス決済事情について紹介します。
官民を挙げたデジタル化推進により、東南アジア最大のフィンテック大国となっているシンガポールは、決済でも急速にキャッシュレス化が進んでいます。国際決済銀行(BIS)の2017年のレポートで、世界で最も“Cashless payment-intensive”な国のひとつと評されました。※1
シンガポールは他の東南アジア諸国に比べて銀行口座の保有率が高く、クレジットカードが広く普及していますが、コロナ禍以降は非接触型決済の利用も拡大しています。
モバイル決済サービスは、2014年ごろから銀行を中心に始まりました。当初は銀行がそれぞれ独自の決済サービスを提供していましたが、2017年にシンガポール銀行協会が主導し、シンガポールの金融機関7行が連携した、電子決済サービス「PayNow」がスタート※2し、今に至ります。
PayNowは、銀行口座と携帯電話番号を紐づけ登録すると、銀行アプリ上で相手の携帯電話番号を入力するだけで送金できるものです。法人であれば、事業者番号で決済が可能です。公共料金の支払いなどに加え、企業間の決済や個人間での送金でも利用できるため、急速に普及しています。送金先の番号入力のみで、アプリ上で個人名や企業名を確認出来る点も便利です。
※1 出典元:第10章 シンガポールにおけるデジタル化の進展 – 財務省
https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2018/digital2018_report10.pdf
※2 出典元:SUCCESSFUL LAUNCH OF PAYNOW | The Association of Banks in Singapore (ABS)
https://abs.org.sg/docs/library/paynow-pressrelease_20170710.pdf
QRコード決済も拡大しています。銀行やクレジットカード会社などが提供する中で、目を引くのは異業種の参入です。たとえば、配車アプリとして東南アジアで拡大しているGrab(グラブ)は、GrabPayというQR決済サービスを提供しています。同社はフードデリバリーや保険、金融商品などサービスを多角化しており、配車アプリで拡大したプラットフォームと顧客基盤を活用し、従来の金融サービス企業には届かなかった層にもリーチしています。
「シンガポールでは異業種が金融サービスに参入するためのハードルが比較的低く、当局からの認可も受けやすい環境がある」とジャクリーンは言います。フードデリバリーの「FoodPanda」や、ECプラットフォームの「Shopee」もキャッシュレス決済サービスを提供しています。
シンガポールでは数多くのプレーヤーがキャッシュレス決済市場に参入しています。2018年には、政府の主導でシンガポール国内統一のQRコード決済「SGQR」が導入されました。異なる決済サービスであっても利用者が同じQRコードを読み取って決済可能になりました。このような動きは日本を含むアジアで広まっていますが、QRコードの規格を統一したのはシンガポールが世界初です。
*本内容は公開日時点の情報です。